警戒心MAXだったのに、御曹司の溺甘愛に陥落しました

「私も知ってる人?」
「もう、ほんとよく話が飛ぶな。酔ってきた?」

クスッと笑って答えてくれない光ちゃんに口を尖らせながら首を振る。

初恋と言えば、私みたいな例外を除けば幼稚園とか小学校とか、そのくらいの年齢の時に通るものなはず。

中学の頃は疎遠になってしまっていたとはいえ、生活圏は高校卒業までずっと一緒だ。知ってる人だっていう可能性も高い。

もう一度誰か聞こうとしたことろで入り口の木の扉が開く音がした。振り返ると五十代くらいの男性がエコバッグ片手に入ってくる。

「やぁあすかちゃん、いらっしゃい。少し久しぶりだね」
「こんばんは、マスター。ごめんなさい、仕事でちょっと色々あって忙しくて」

黒いスクエア型のメガネをかけ、口ひげを蓄えたマスターはとても渋くて格好良い。

光ちゃんのバーテンダーの師匠でもある彼は、カウンターの奥に入り荷物を置くとすぐに出てきて私に「食事は?」と聞いてくれる。

「ふふ、待ってたんです。シーフードサラダと自家製ボロネーゼお願いします」

土曜日の夜はこうして美味しいお酒とご飯で癒やされ更けていった。


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