警戒心MAXだったのに、御曹司の溺甘愛に陥落しました
入社してからずっと、会社のすみっこで雑用ばかりだった。
備品の管理、資料のファイリング、電話対応に来客対応、人手不足の部署への手伝い。会社を運営していく上で欠かせない業務でありながら担当部署が決まっていない雑務のすべてが担当領域。
会社のなんでも屋さん。
それが総務部庶務課だった。
「蜂谷(はちや)、悪いが企画部に助っ人に行ってくれ」
「……はい?」
そう総務部長に言われたのは昨日。
今日から企画部のチームにアシスタントとして行かなくてはならないらしい。
同じ会社に勤めているとはいえ、フロアの違う企画部の人たちと一緒に仕事をすることは全くと言っていい程ない。
たしか同期がひとり企画部に異動していたとは思うけど、ここ最近顔を合わせた記憶もない。
「例のプロジェクトで総務からもひとり欲しいと言われてね」
「……なんで私なんですか?」
「天野の補佐が欲しいらしい。企画部の他のアシスタントは手一杯だそうでな。それに、お前なら問題も起こさなさそうだ。頼んだぞ」
総務部長が少し面白そうに笑ったのを見逃さず、私は臆せずその笑顔を睨んだ。
きっと最後の一言が私を補佐に送り込む理由に違いない。
……天野さん。確か私の七つ上で、企画部のエースと呼ばれる天野翔(あまの しょう)さん。
キリリとした眉に男性では珍しいほどパッチリとした二重まぶた。少し薄めの唇。髪は落ち着いたダークブラウンに染められている。
中性的な顔立ちをより魅力的にみせる長身とスラリとした体躯は遠くからでも人目を引く。