警戒心MAXだったのに、御曹司の溺甘愛に陥落しました

気が付くと手元のグラスも空になっていた。

いつの間に頼んだのか、次のドリンクが目の前に置かれている。あまりお酒が強くないのに、早いペースで飲みすぎたかもしれない。

「それにしても、蜂谷さんがアシスタントに来てくれて助かったな」
「え？」
「資料作るのも早いし、雑務も引き受けてくれて。いつも以上に捗ったよ」

松本さんに褒められ、照れくさくも嬉しい。

「蜂谷さんのこと頼りすぎて、なんでもお願いしてごめんね」
「そんなこと…」
「一緒に仕事してて楽しくなっちゃって。蜂谷さん仕事早いから…つい」

一緒に仕事してて楽しい。

そんなことを言われたのは初めてだった。

「ハッチーはできる子だもんねー」

キヨはすでに酔ってるのか、ケタケタ笑いながら松本さんに便乗して褒めてくれる。

「新人研修のときも、ハッチーすげぇ優秀だったもんね」
「そんなことないよ」
「なんで庶務課配属だったのかなー、もったいない」
「それは俺も思った。企画部おいでよ、ハッチー」
「いいね！企画部のなんでも屋さん！大歓迎」

キヨだけじゃなく、見た目は変わらない松本さんも私を急にあだ名で呼び出すくらいには酔ってるらしい。

ちらりと隣の天野さんを見上げれば、なぜか無言に仏頂面でビールを煽っている。

「天野さん？」
「なんだよ」
「…いえ」

天野さんは褒めてくれないのかな。

そんな風に考えた私も、きっと相当酔ってるんだと思う。