警戒心MAXだったのに、御曹司の溺甘愛に陥落しました
その手の暖かさに思わずうっとり目を閉じかけて、慌てて理性を呼び戻して上半身を引いた。
「触らないでください。誰かに見られたら誤解されます」
「させとけば?」
「困ります」
「なんで?」
「なんでって……」
天野さんは困らないのだろうか。好みでもない私なんかと噂になって。
この人は本当に何を考えているのかわからない。
失礼な人だと思えば、たまに気まぐれのような優しさを見せて。かと思えばやっぱり意地悪で。
「誤解じゃなければいい?」
「……え?」
先程頬に触れようとしていた指の長い綺麗な手が私の手首を掴む。
そのまま腕をなぞるように上へ滑り、肩まで来ると、やっぱり頬に戻ってくる。
大きな手は私の頬をすっぽりと包んで、わざとなのか小指が首筋にあたってくすぐったい。
「天野さ……」
「蜂谷」
至近距離で見つめる瞳。
真剣な眼差しに射すくめられて、先日の屋上でのキスを思い出し身体が熱くなる。
「あ、あの」
身を引こうとすると、それを遮るように頬に触れていた手が後頭部に回り、首の後ろを掴まれてそのまま天野さんの胸の中へ押し付けられる。
目の前には肌触りの良いレモン色のネクタイ。