警戒心MAXだったのに、御曹司の溺甘愛に陥落しました
初めて男の人の胸に顔を埋め、煙草の匂いに混じった天野さんの香りにクラクラする。
「天野、さん……?」
「それ」
なんとか平常心を保とうと深く息を吐き呼びかけると、頭上で不機嫌な声が聞こえる。
「え?」
「翔」
「はい?」
「翔って呼んでみて」
……なんで?
「嫌です」
「はぁ?! 何でだよ」
片手で後頭部を抑えていただけの手が肩に下り、ぎゅっと抱きしめる右腕に力が込められた。
どうして今私は彼に包まれながら名前で呼べと強要されているんだろう。
「こっちのセリフです。なんで呼ばなきゃいけないんですか」
「お前、相田は名前で呼んでるじゃねーか」
「そんなの関係ないでしょう?」
どうして今キヨが出てくるの?
天野さんの考えていることが本当にわからない。