警戒心MAXだったのに、御曹司の溺甘愛に陥落しました
それは真面目に仕事に取り組む姿勢と、素直で裏表ないさっぱりとした人柄によるものだと理解したときには、もう自分の気持ちを自覚しつつあった。
しかし、あれだけ社内の男共のアプローチをスルーしてきた蜂谷だ。
しかも聞く所によると『イケメン嫌い』だという噂。
自分では意識することもないが、多くの女性から好まれる顔であるとは自覚している。
近付き方を間違えれば、俺もバッサリと切られることだろう。
そんな時に新店舗のためのプロジェクトチームのリーダーに抜擢され、彼女がアシスタントとして駆り出されてきた。
総務部からもひとり助っ人を借りるとは聞いていたけれど、まさか蜂谷が来るとは思っていなかった。
初対面での警戒した様子が可笑しくて、からかうとむっとした表情で睨んでくる。仮にも上司にこんなあからさまな態度をとるやつに出会ったことはない。
無愛想な顔じゃなく、総務で見たような素の表情がもっと見たい。
面白くなって更にからかうと、素直に応戦してくるもんだからこれの繰り返し。
ガキかと自分に呆れはするものの、それが心地良いんだから始末が悪い。
子供の頃は成長が遅く、中学時代も小学生に間違えられることなんてザラだった。
異性として声がかかるようになったのはグッと背が伸び始めた高校になってから。
興味もあって告白されるまま何人かと付き合ったが、俺に合わせようと素を出さずに振る舞い、さらに同じだけの愛情を返せと迫る彼女たちとは皆長く続かなかった。
それを許容出来るだけの情を彼女たちに持ち合わせていなかった俺にも原因はある。
自分から惹かれて手に入れたいと思ったのは、蜂谷が初めてだった。