警戒心MAXだったのに、御曹司の溺甘愛に陥落しました
キリッと印象深い猫目はしっかりとまつげがカールされ、口元は下品にならない赤い口紅。
細身のストライプのシャツに細身のパンツ。足元は高いヒールのパンプスを履いているのに歩き方がとても綺麗で様になっている。
この会社では女性社員は事務やアシスタントの子が多く、仕事をしに来ているはずなのにおしゃれで競い合っているかのような恰好をしている子が多い。
淡く可愛らしい色合いのワンピースやカーディガンに身を包みながら、将来有望な男性社員の噂話ばかりしている女性社員とは真逆なオーラ。
「紅林です。お久しぶりの方、はじめましての方も、三週間という短い間ですがよろしくお願いします」
部長の紹介によれば、彼女は五年前に関西支社を立ち上げる時のメンバーで、事情があって三週間だけ本社に戻ってきているとのこと。
それまではこの企画部にいたらしく、五年以上企画部にいる人にとっては懐かしい顔みたいだ。
ということは……。
「久しぶりね」
「びっくりしましたよ、急に戻ってくるなんて」
案の定天野さんとも顔なじみのようだ。
私は午後から使う会議室の準備をしようと立ち上がると、何人かが紅林さんに声をかけるため天野さんのデスクに集まった。
「紅林さん!」
「松本、頑張ってるみたいね」
「はい」