警戒心MAXだったのに、御曹司の溺甘愛に陥落しました

長身の二人が並んで立っている姿はまるでモデルのようで、企画部の面々だけでなく、隣の開発部や商品部の人たちまでも視線を送っているのがわかる。

それに気付かない二人ではないだろうに、全く気にしないまま話を続けている。

「天野君の奢りだよね?」
「誰がそんなこと言った?」
「え? 紅林お帰りなさいのランチでしょ?」
「天野さんゴチになりまーす」
「おい相田、お前は便乗して何言ってんだよ」
「松本は? あの子も誘っていこうよ」
「松本さんは午後イチ打ち合わせなんで、向こうで食べるってさっき出ていきましたよ」

一緒にランチを取るのが当たり前といった様子で、わいわいフロアを出ていく三人。

ただボーっとそれを見ていると振り返った天野さんに呼ばれる。

「蜂谷早く来い、置いてくぞ」
「……はい」
「意地悪な言い方だなー。行こう蜂谷さん、天野君が奢ってくれるって」
「おい!」

結局四人で外に出るはめになり、近くの居酒屋がランチを始めたらしいのでそこに入った。

パンプスを脱いで掘りごたつの座敷に上がる。天野さんの隣には紅林さんが座り、私はキヨと並んでぺたんこな座布団に腰をおろした。

「懐かしいな、あんま変わってないね」

紅林さんは翔さんの二期上の先輩で常に企画部では優秀。店舗統括部の頃から一緒で翔さんの教育係だったそう。

運ばれてきた食事に手を付けながら昔話を楽しむ二人と、それを楽しそうに聞くキヨ。

……だから来たくなかったのに。

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