警戒心MAXだったのに、御曹司の溺甘愛に陥落しました

私の意図を汲んだ光ちゃんは苦笑いしながらぽんぽんと頭を叩くと「気を遣い過ぎだよ」って言って手を引いてくれたけど。

そうなると名前を呼んでいるのを聞いただけでグルグルしている私はなんなんだろうと思考がループし始める。


結局、次の日も仕事だからと軽めのカクテルを二杯だけ飲んで帰ってきた。

家に着いてスマホをチェックすると、何度か知らない番号から着信があった。

もしかしたらって予想はついたのに敢えて折り返して確かめることをしなかったのは、違ったらどうしようと考えてしまったから。

この三ヶ月間、天野さんと電話番号を交換することはなかった。

彼が社外に行こうと私はずっとデスクにいる。

会社にかけてくれればコンタクトは取れるし、天野さんは社用携帯を持っていたので必要な時はそちらに掛ければそれで済んでいた。

「蜂谷さん、おはよう。体調どう?」

出勤するなり私を見つけて声を掛けてくれる紅林さんに、なんとか笑顔を張り付けて返事を返す。

「おはようございます、きのうはすみませんでした」
「いいのよそんなの。具合悪いの気付かなくてごめんね」
「いえ……」

それ以上会話が続かなくて俯きがちになったところにガシっと頭を掴まれた。

こんなことをするのは一人しか思い当たらない。

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