警戒心MAXだったのに、御曹司の溺甘愛に陥落しました

一号店開業から二十年を迎える来年、『calando』とは違った客層を取り込むため、新たなコンセプトの店舗をオープンさせることになった。

その大きなプロジェクトを発足させるため、開発部、企画部、店舗統括部、マーケティング部、広報部など、各部署から人員が集められるにあたり、大規模な組織改編があった。

当然庶務課にいた私にもその一大プロジェクトの話は届いていたが、同じ総務部の人事課やお隣の経理部に手伝いにいく頻度が高くなるくらいで自分には無関係だと決め込んでいた。

まさかそんなチームの責任者である天野さんのアシスタントに呼ばれるだなんて、夢にも思わなかった。


企画部に助っ人に来て二日目。

私は第三会議室のすみっこで議事録を取っていた。

初日の昨日、このプロジェクトチームの責任者である物凄く感じの悪い天野さんに今回の説明を受けた。

仕事内容は、ほぼ雑務。

「必要資料の作成から電話対応。総務や経理、法務に回す書類の管理。あとは今回営業とマーケと一緒に外に出ることも増えるから、俺のスケジュール管理も頼みたい」

庶務課の仕事は嫌いじゃないし、特に不満もなかった。

誰からも評価されないような部署だけど、自分たちがいなければ会社は立ち行かない。

会社のなんでも屋さんの二つ名は、私にとって大事な誇りだ。

何より庶務課は居心地が良い。

仕事はほぼマニュアル化されているから難しいことはないし、特に忙しい時期でない限りは定時退社が出来る。

< 6 / 161 >

この作品をシェア

pagetop