警戒心MAXだったのに、御曹司の溺甘愛に陥落しました

最大の美点は男女とも圧倒的に既婚の社員が多く、面倒事に巻き込まれないこと。

会社に長く勤め、産休や育休を経た女性社員も少なくないため、庶務課の年齢層は比較的高い。

新入社員として庶務課に配属され三年目になった今も、後輩は入ってきておらず一番下っ端。そんな私を庶務課の先輩達はとても可愛がってくれる。

やりがいを持って仕事熱心というわけではないけど、同年代の女子と一緒に働くのが苦痛に感じる私にとっては、とても恵まれた環境だったのに。

それが急に……。

「会社のなんでも屋さんから、天野さん専属のなんでも屋さんになるってこと?」

もうすでに庶務に帰りたい。

そんな絶望的な思いでつい新たな上司の目の前で呟くと、ぶふっと吹くように笑われる。

「俺専属のなんでも屋か、悪くないね。そんな捨てられた子犬みたいな目で見られても、しばらく総務には帰さないよ」

『愛嬌がない』の次は『捨てられた子犬』?!

いくら上司だとはいえ失礼にも程がある。睨むように天野さんを見ると

「ふはっ!尻尾立てて警戒してたかと思えば今度はじっと見つめてくんの?忙しいね」

小馬鹿にしたような言い方に腹が立って、無言で天野さんのデスクをあとにする。

そんな最悪の気分で企画部助っ人初日は過ぎていった。

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