警戒心MAXだったのに、御曹司の溺甘愛に陥落しました

そんな私を納得がいかなそうな顔をして見ている天野さんの手元に視線を移した。

「資料、どうでした?」

午後に食材を仕入れる業者へ開発部とともに打ち合わせへ出る彼から頼まれた資料。

少しずつ任される仕事が大きくなってきている気がして、毎日勉強の積み重ねでついていくのに必死。

庶務課にいた頃だって仕事に不満はなかったけど、彼の補佐をするようになってからは仕事が楽しくて仕方ない。

こうやって大きなプロジェクトが進んでいくのを、一番トップで指揮をとっている人の近くで見ていられる幸せを噛みしめる毎日。

天野さんに認められたい。頼られたい。

その想いは日増しに強くなっていく。

「ああ、良く出来てた」

急に変わった話題に眉を顰めながらタブレットに少しだけ視線を落として、また私に戻ってくる。

ゆっくりと近付いてくる天野さんの大きな瞳に見つめられ、ぎゅっと胸が掴まれたように疼く。

「なぁ。褒めて欲しい?」

正午まであと三十分以上あるこの時間、給湯室を使う人はあまりいない。

このフロアは上の企画や開発、商品部などの多くの人と関わる部署と違い、総務や経理、法務など主に事務手続きを行う書類を相手にする部署ばかり。

静寂というわけではなくても、上に比べればかなり静かなオフィスで同じ会社とは思えないほど。

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