警戒心MAXだったのに、御曹司の溺甘愛に陥落しました
今までは興味もないしくだらないと思っていた女子社員の姦しいお喋りに少しだけ耳をそばだてると、口汚く蜂谷を罵る女達の醜い言葉の数々に腸が煮えくり返る思いだった。
彼女はこんな酷い言葉をずっと浴び続けてきたのだろうか。
助けを求めることも諦めて慣れてしまう程、長い間ひとりで。
「ふふ、翔も大変ね」
「え?」
「蜂谷さん。守ってあげないと」
「ああ」
もちろんそのつもりだ。あんな言葉の暴力に慣れさせたくなんかない。
何か思うところがあったのか、気にしないことにしたと言っていた蜂谷。無愛想を卒業だとも。
このところ忙しそうに、でも楽しそうに仕事を頑張っている姿を見て、より愛おしさが込み上げてくる。
相田との距離感が多少気安すぎて気に入らないが……。
「翔は鈍感だからなぁ」
「はぁ?」
「だって。気付かなかったでしょう?」
意味ありげに微笑む美樹を睨み返す。
当時の美樹の気持ち。関西に行ってまで想いを残すほど好意を寄せてくれているとは思いもしなかった。
それでも。
「俺もあの頃、美樹との時間が大事だった」
鋭くなった視線を少しだけ緩めて、自分の気持ちを正直に話す。