警戒心MAXだったのに、御曹司の溺甘愛に陥落しました
「『calando』との差別化を図ろうとすると、少し価格帯を高めにして高級感を出していくのが定石じゃないですか」
「それは誰をターゲットに?」
「立地的に流行に敏感なOLがメインでどうですか」
「そうなるとお一人様でもグループでも入りやすい感じで……」
思い思いに発言していく場の雰囲気は、社の一大プロジェクトの会議とは思えないほど明るい。
仕事を楽しんでいる人たちのプロジェクトにかける意気込みが伝わってくるようで、私は雰囲気に圧倒されていた。
それでもこの会議での決定が後の新店舗の事業計画書になるので、聞き漏らさないよう気を配りながら必死にタイピングする。
新店舗はオープン予定地が新幹線も乗り入れるターミナル駅近くということもあり、『仕事帰りにほっと一息つけるお酒も飲めるカフェ』という方向性に決まった。
ここからペルソナ作成、さらに詳しい市場調査と進み、販促戦略を練っていく。
会議が終わったあと、主に天野さんと動くらしい松本さんという企画部の男性社員が、同じく企画部で私の同期のキヨと一緒に挨拶に来てくれた。
「松本です、よろしくね」
「庶務の蜂谷です。すみません、こちらから伺うべき所……」
「大丈夫。これだけ大きなプロジェクトだと誰に挨拶するのかわかんないよね」
恐縮する私に爽やかに微笑んでくれた松本さんは私の三つ上。
中性的な顔立ちの天野さんとは違い、異国の血が混じったような濃い顔立ちのイケメンだった。
彼もきっとモテるに違いない。