警戒心MAXだったのに、御曹司の溺甘愛に陥落しました
「うん。また詳しく話すけど、もうそういうのやめようと思って」
「良いと思う。可愛いよ」
「ふふ。ありがと、光ちゃん」
嫉妬にカッと体が熱くなる。
蜂谷が俺以外の男に甘えた声や仕草を見せるのが、頭を掻き毟りたくなるほどイライラする。
目立たないように意識していた蜂谷のいつもと違う可愛らしく喜ぶ声や態度に、普段近くで仕事をしてきたプロジェクトチームのメンバーでさえ目を奪われていた。
それすら許せないような独占欲が自分の中にあったことに驚く。
二人の親しげなやり取りを目の当たりにして、気が付けば勝手に体が動き、蜂谷の腕を掴んで彼から引き離した。
「はじめまして、責任者の天野です。よろしければ詳しい話をあちらで」
急に腕を掴まれた蜂谷は驚きはしたものの、ここが職場だと思い返したのか「すみません」と大人しく引き下がる。
呆然と蜂谷に見惚れていた山本を小突き会議室に案内するように促すと、不機嫌な感情を隠しきれていなかったのか、目の前の阿久津さんがクスッと男前な顔で笑った。
「あすかちゃん、今日来る?」
会議室へ案内され身体の向きを変えながら、俺の後方に下がっていた蜂谷にもう一度声を掛ける。
これは目の前で挑発されているのか牽制されているのか。
いずれにしても初めて自ら欲しいと思った女を手に入れるのに、幼なじみだろうと既婚者の男に邪魔される謂れはない。
蜂谷は先程注意されたばかりで気まずそうにしながらも「うん。金曜だし行こうかな」と少しだけ考えて小声で答えた。