警戒心MAXだったのに、御曹司の溺甘愛に陥落しました

肌寒さを感じて寝返りを打ちながら布団を引き寄せる。

うっすらと目を開けると、あたりは既に明るく朝になったのだとわかった。

手に握るシーツはいつもと手触りが違い、見覚えのない色をしている。枕の上部にも手を伸ばすが、やはりお気に入りのクマ耳付きのものではない。

……私のベッドじゃない?

一気に頭が覚醒して飛び起きる。

セミダブルのベッドヘッドには文庫本が一冊置かれているだけ。枕もシーツも無地のオフホワイトで柔らかく肌触りの良いシーツが掛けられているが、明らかに私のベッドではない。

部屋の中はシンプルで、ベッド以外に見えるのはクローゼットと小さな棚。文庫本や専門書が並び、上にはオシャレなサイコロ型の木製万年カレンダーが置かれている。

明らかにホテルなどではなく誰かの家の寝室。

ここはどこ⁉

とにかく起きようとベッドから降りようとしたところで、カチャと部屋のドアが開いた。

「あぁ、起きたか」

部屋に入ってきたのは、白い大きめなパーカーにグレーのスエット姿の天野さん。

シャワーを浴びたのか髪は濡れていて、首にタオルを掛けたまま。片手にミネラルウォーターのペットボトルを持っている。

完全におうちのリラックススタイルの天野さんの登場に、さらに混乱して言葉が出てこない。

「気分は? 吐き気はないか?」

なぜ体調を心配されているのかもわからないが、とりあえず身体に異変はないので頷いておく。

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