警戒心MAXだったのに、御曹司の溺甘愛に陥落しました

さらに、キヨこと相田清正(あいだ きよまさ)くん。

「ハッチー! 久しぶり!」

新人研修で一緒の班になって以来勝手にあだ名で呼び、邪気のないニカっとした笑顔を向けてくれる同期。

野球に青春を捧げてきた彼はがっしりとした体躯に短髪。黒目がちな瞳が印象的なこれまたイケメンだ。

本来ならイケメンとは関わり合いになりたくないと思いつつ、研修中に高校野球の話で大いに盛り上がり、周りの反感を買わない程度に付き合いのある唯一仲の良い同期だ。

彼は今年から企画部に配属されており、天野さんに負けず劣らずのエリート街道をひた走っている。

「キヨ、お疲れさま。これから少しの間……よろしくね」
「ははっ、あんまりよろしくしたくなさそうな顔だね」
「うん。正直もう庶務に帰りたい」

ポロリと本音を漏らすと、松本さんが面白そうに私を見た。

「そんなこと言わずに。天野さんの補佐で仕事に打ち込める女の子なんて稀なんだから、帰られちゃったら困るな」

「そうだよ。まぁハッチーはイケメン嫌いだし、天野さんに見惚れて仕事が手につかなくなるなんてことなさそうだもんね」

決してイケメン嫌いというわけではない。ただ関わっていると面倒なことになるリスクが増えるので避けたいだけ。

それ故今のこのタイプの違うイケメンふたりと話している状況も、全くもって喜ばしくない。

曖昧に笑って会釈だけ返し、私は会議室を出た。


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