警戒心MAXだったのに、御曹司の溺甘愛に陥落しました
俯いて改めて自分を見ると、きのう着ていたブラウスのままなことに気が付いた。
そして現状を把握しようと頭をフル回転させる。
昨日は確か会社に光ちゃんが来て、天野さんと一緒に『Karin』へ向かったんだ。
電車で向かう二人きりの三十分という時間が気まずくて、いかに『Karin』が素敵なお店かを聞かれてもいないのに熱心に語った。
お店に入ってからは光ちゃんも交えて新店舗の話や光ちゃんのバーテンダーに対する思いなんかを聞いて、天野さんとも自然に話せていたはず。
いつも通り、マスターが作ってくれる美味しい食事と光ちゃんオススメのカクテルを堪能して。えっと、そこから……?
まずい。どうやって帰ってきたのか全く記憶がない。
この感じは一度経験がある。
確か光ちゃんのお店で初めて母と飲んだ時、自分の酒量の限界を知るべきだってたくさんカクテルを飲んで寝落ちした時と同じ感覚。
あの時は確か光ちゃんが寝ている私を抱きかかえてタクシーに乗せてくれて、降りる時は父と母で何とか私を部屋まで運んだと言っていた。
昨日は、まさか……。
「あ、あの、ここ、もしかして」
「俺の家」
「……ですよね」