警戒心MAXだったのに、御曹司の溺甘愛に陥落しました

天野さんが私の一人暮らしする家を知っているはずがない。

眠ってしまった私をここに運んでくれたのだとわかってはいるものの。

どうしよう。なんたる失態。

天野さんへの気持ちを自覚してまだ三日ほど。自分に自信をつけて、彼の隣に並んでも誰も文句を言えないような自分になろうと決意したばかりだと言うのに。

よりによってこんな迷惑をかけてしまうとは……。

「すみません」

いたたまれなくて頭を下げたもののどうしたらいいのかわからずにいると「腹減ってる?」と至極普通の調子で聞いてくる。

「え? いえ」

お腹が空いていないというよりは、まだそんなことを考えられるほど落ち着いてはいないというのが正しい。

「じゃあ時間も時間だし、ブランチでいいか」

そういえば今は何時だろう。

きょろきょろ見回して壁に掛かっている黒の時計を見ると九時を少し過ぎたところ。

一体どれだけ眠っていたんだろう。人様の、それも天野さんのベッドを占領してしまうなんて。

……占領、していたんだろうか。

朝起きた瞬間は私ひとりだったが、一体天野さんはどこで眠ったのだろう。

今いるここが寝室だというのはベッドからわかるが、他にどんな部屋がいくつあるのかもわからない。

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