警戒心MAXだったのに、御曹司の溺甘愛に陥落しました
まさか、このセミダブルのベッドで一緒に?
「あ、あ、天野さん!」
「翔」
「……へ?」
「呼び方戻ってる」
「あ。いやでも、そうじゃなくて」
「昨日までは会社だったから見逃したけど。今はプライベートだから」
そう言われても、名前で呼べたのなんて給湯室で勢いで言ってみた一度きり。
あの時は美山さん達から浴びせられた中傷の数々や紅林さんへの嫉妬心から、なんだか心の中が盛り上がっていて。
今の自分の気持ちが恋だと自覚した途端、少しだけ甘えてみたい気がした。
褒めてほしいかと近付いてきた彼に、裏の意図を確信しながらほしいと返した。
与えられたご褒美のようなキスは屋上で触れた時よりもしっかりと唇が合わさって、逃げ出しはしなかったものの天野さんの腕が背中に回ってきた気配に驚いて身体を引いた。
それ以来一度も名前で呼ぶなんてことは出来ていない。
「あの、きのうは、どこで」
「ん? あぁ、呼んだら教えてやるよ」
私が何を懸念しているのかを悟ったらしい。
ニヤリと意地の悪い笑みを見せると、腕を組んでこちらを見つめている。
本当に意地悪だ。
「どこで寝たんですか」
「誰が?」
「……翔、さん」
「お前の隣」
「ええっ?」
やっとの思いで名前を呼んだのも吹っ飛ぶほど衝撃的な回答に思わず大きな声を出してしまった。