警戒心MAXだったのに、御曹司の溺甘愛に陥落しました

「昼飯、洋食でいい?」
「はい、なんでも」
「朝食ってないから腹減っただろ」

昨夜から今朝にかけての失態は思い出させないで欲しい。少しだけ俯いた私を笑いながら、ステンドグラスのはめ込まれた扉を開けてくれた。

お店の中はレトロモダンな雰囲気。ひとつのテーブルごとにソファが全て違っていて、店主の家具へのこだわりが見える。

壁には木製の棚にブリキのおもちゃやビオラ、トランペットなどがセンスよく飾られている。

「ここ焼きカレーとハンバーグがめっちゃ旨いんだって」
「ハンバーグ、大好きです」
「知ってる。昨日聞いた」

そんな話したかなと首を傾げつつ、だからこそこのお店に連れてきてくれたんだと思うと嬉しくて泣きたくなった。


天野さんの言っていた通り絶品のハンバーグを食べて、もう少し繁華街へ車を走らせてショッピングモールの中で映画を見た。

迷惑をかけた謝罪として払う予定だった先程のランチだけじゃなく、映画代もポップコーンのお金さえも天野さんに出させてしまい、恐縮していると意地悪な顔で言う。

「俺のが稼いでるから。悔しかったら抜いてみな」

企画部のエースで最年少課長目前と言われている天野さんを、庶務課である私が抜けるわけなんてないのに。

悔しくて天野さんの分のコーラを一気に半分ほど飲み干してやった。

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