警戒心MAXだったのに、御曹司の溺甘愛に陥落しました
「あっこら!お前のはアイスティー買っただろ!」
「ふんだ! いつか天野さんが私をべた褒めするくらい仕事出来るようになるんですから!」
以前はただ与えられた仕事を効率よくこなすことだけ考えていた。
庶務課の居心地の良さに甘えて、あまり深く人と関わらないようにして過ごしてきた。
でも今はプロジェクトチームの補佐にたまたま呼んでもらえたおかげで、仕事が楽しいと思えるようになってきた。
周りの人に何を言われても平気なくらい、自分に自信をつけたい。
だからこそ、仕事の楽しさを身近で教えてくれた天野さんに認められたい。褒められたい。
「べた褒めねぇ」
「そうですよ」
「はは、お前。そんなに俺にキスされたいの?」
耳元で囁かれ、先日の給湯室でのやり取りが思い出される。
『なぁ。褒めて欲しい?』
『……褒めて下さい。翔さん』
頭の中を駆け巡る映像。
あまりの羞恥にここが映画館のロビーだということも忘れて叫んでしまった。
「バッ、なっ、ちがっ、バカじゃないですかっ⁉」
「あははは! うるせぇよ、恥ずかしい奴だな」
「恥ずっ? あなたに言われたくないですっ!」
「ほら、行くぞ」
手首を掴まれて静かなロビーからガヤガヤと賑やかなショッピングフロアに出た。
「天野さん、悪趣味です」
「はは、あんなに叫ぶとは思わなかった」
「やめてくださいよ、ああいうの」
「お前がいつまでも名前で呼ばないからだろ」
はじめての恋。
会社の上司で俺様で意地悪で、嫌味なほど格好良い人。