海賊たちは歌を愛す
「どうしたんだろう……」

震える足に戸惑いしか感じない。刹那、ミラの頭の中にぶわりと記憶が流れ込んでいた。否、自分の失ってしまった記憶の一部だ。

『かわいそうに……』

『まだ小さいのに、これからどうやって生きていくのかしら……』

『ミラ、ごめんね。発表会にはお父さんとお母さん、仕事で行けなくなっちゃった』

『たくさん練習したのに!見に来るって言ったのに!お父さんとお母さんなんか嫌い!どこかへ行ってよ!!』

『ミラ、落ち着いて聞いてね……。お父さんとお母さんが事故に遭って、亡くなったそうよ……』

幼い日の後悔が蘇る。その後、切ない感情全てを歌っているうちに蓋をして沈めてしまった。

「ミラ、どうしたの?」

「顔色が悪い。ジェルメイヌに診てもらった方がいいんじゃない?」

ルカーナとカイルに見つめられ、ミラは慌てて「何でもないよ」と笑う。そして二人から逃げるように船から降りた。
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