好きな人には好きになってもらいたいじゃん。
◇わたしの好きな人は



桜がひらひらと舞い、一面のピンクが緑色に染まりはじめる季節。

新たな生活はすでにスタートしている。
玄関に置いてある姿見で全身をチェックする。


大丈夫。おかしいところはない。
今日も最高のわたしで、ドアを開けた。



「くるちゃん、おはよう」



わたしに気づくなりすぐに挨拶をしてくれる。


幸せ……!

いっくんの顔を見ただけで、今日が最高に幸せな日になる。



「いっくんおはよう!」


駆け寄って目の前まで行き、いっくんの顔を覗き込みながら挨拶を返す。

今日もかっこいい。素敵。

爽やかな笑顔のいっくんはわたしの幼なじみ。
折原樹(おりはらいつき)だからいっくんって呼んでいる。

わたしより1個上で、反抗期とかそんなのなくいつも優しくて仲良くしてくれた。
前髪を分けていて、そこから見えるおでこがすごくすごくかわいいんだ。



「いっくん、行こう」

「あ、まだ……」

「樹、弁当忘れてる」

「ほんとだ。ごめん、ありがとう」



……最悪だ。

いっくんとふたり、楽しい登校をしようと思っていたのに。
気づかれないように邪魔者を睨むけど、すぐにわたしの視線に気づきばかにしたように鼻で笑った。


むかつく……!




< 1 / 347 >

この作品をシェア

pagetop