好きな人には好きになってもらいたいじゃん。
◇わたしの好きな人は
桜がひらひらと舞い、一面のピンクが緑色に染まりはじめる季節。
新たな生活はすでにスタートしている。
玄関に置いてある姿見で全身をチェックする。
大丈夫。おかしいところはない。
今日も最高のわたしで、ドアを開けた。
「くるちゃん、おはよう」
わたしに気づくなりすぐに挨拶をしてくれる。
幸せ……!
いっくんの顔を見ただけで、今日が最高に幸せな日になる。
「いっくんおはよう!」
駆け寄って目の前まで行き、いっくんの顔を覗き込みながら挨拶を返す。
今日もかっこいい。素敵。
爽やかな笑顔のいっくんはわたしの幼なじみ。
折原樹だからいっくんって呼んでいる。
わたしより1個上で、反抗期とかそんなのなくいつも優しくて仲良くしてくれた。
前髪を分けていて、そこから見えるおでこがすごくすごくかわいいんだ。
「いっくん、行こう」
「あ、まだ……」
「樹、弁当忘れてる」
「ほんとだ。ごめん、ありがとう」
……最悪だ。
いっくんとふたり、楽しい登校をしようと思っていたのに。
気づかれないように邪魔者を睨むけど、すぐにわたしの視線に気づきばかにしたように鼻で笑った。
むかつく……!
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