好きな人には好きになってもらいたいじゃん。
自信をつけるために、かわいくなる努力をしてきた。
見た目に気をつかうことで、気分を上げた。
好きになってもらうために、女の子らしさもかわいく思ってもらえる仕草も、たくさん研究した。
自分をつくることだってできる。
あざとくかわいく、迫ることだってするよ。
それで、好きになってもらえるならいくらでもできるのに。
素のままの姫野先輩を見ると、わたしの努力は無駄だって思わされる。
ありのままの自分に悩みながらも向き合う先輩に、負けたって気分にさせられる。
「自分がわからなくなる」
つぶやくように言って俯いたわたしの頬を、すぐに廉が両手で包んで無理やり上に向かせられた。
廉のまっすぐな漆黒の瞳に吸い込まれそうになる。
「胡桃は胡桃だろ」
「っ、」
「余裕も自信もなくていい」
「…………」
「胡桃なら、それでいい」