好きな人には好きになってもらいたいじゃん。
さっきの優しさが嘘のよう。
ほんと、廉のそういうところがだめなんだよ。
でも、今回は助かったよ。
「ありがとね」
「……おう」
「仕方ないからぜんぶあげるよ」
わたしから視線を逸らした廉に、さっき買ったばかりのペットボトルを渡す。
「もうねぇじゃん」
「だれかさんが飲んだからでしょ」
「まぁ、もらうけど」
それを受け取り、廉はまたキャップを開けてお茶を飲む。
少なくなったペットボトル越しに人影が見える。
「いっくん!」
「あ、くるちゃん。廉もこんなところにいた」
わたしの声に反応したいっくんは歩いて来てくれる。
だけど、待ってるだけももどかしくて、気がつけばわたしもいっくんに向かって足を進めていた。