好きな人には好きになってもらいたいじゃん。
駆け寄ってもう目の前にいっくん、というときに足がもつれた。
前のめりになり、そのままいっくんの胸の中に飛び込む。
そのときにはもちろん、背中に手を回しぎゅっと力を込める。
「うわぁ、びっくりした」
Tシャツ越しのいっくん。
薄いから、いっくんがすごくそばに感じる。
「いっくん」
顔を上げていっくんを見上げる。
驚いた表情のいっくんだったけど、優しい瞳でわたしを見てくれた。
「わたし、がんばるからね!」
「看板?がんばってね。くるちゃんは器用だから上手だよね」
勘違いしているいっくん。
わたしの頭を撫でてくれて、抱きついていても拒否しない。
逆にここまでしても、幼なじみって思っているいっくんがすごい。
わたしは廉とハグなんかしないもん。
いっくんだけなのにさ。