好きな人には好きになってもらいたいじゃん。




「声かけてくれればよかったのに」



そしたら、待たなくて済むじゃん。

廉が待つっていうことがまずびっくりだし。


登校のときは必ずわたしのあとに出てくるもん。




「……行くぞ」

「あ、うん」



わたしの言葉に対する返事はなかった。

廉が歩き出すから、その後ろを歩く。



……浴衣に対する反応はなかった。


普通さ、浴衣着ている女子がいたら一言なにかあるでしょ。

白地に青や水色の花の模様が散りばめられている浴衣。


いままでは、ピンク系が多かったからイメージ変えたのに。


髪型も巻いてアップにして、いつもと違うのに。



廉はなんにも言ってくれないね。




「人多すぎだろ……胡桃、離れんなよ」

「あ、れっ……」



廉がなにか言っていた気がするけど、すでに人の波にのまれて聞こえなかった。




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