好きな人には好きになってもらいたいじゃん。
さっきもいつも以上にゆっくりだったからわたしに合わせてくれてたんだと思う。
それでも置いてけぼりになっちゃったから。
「心配かけんな」
「心配したの?」
「……帯、曲がってる」
「え、うそ!?」
わたしの質問には答えずに、浴衣の指摘をされた。
さっきぶつかったときかな?
今日はひとりで着付けしたから、ちょっと甘かったかも……。
いっくんに会えたときのために完璧でいたいのに。
そう思い、いますぐに直そうと人波から脇に抜けて、立ち止まる。
「俺がやる」
「え、ちょっ……」
もちろん廉も一緒で、立ち止まるなりわたしの浴衣に手をかけた。
びっくりしてその手を止めようとするも、するりとかわされ、ささっと直してくれた。
「あ、ありがと……」
「ん」
「……てか、一瞬、胸触らなかった?」
「触ったか?だったら悪い。ぺちゃんこすぎてわからんかったけど」