好きな人には好きになってもらいたいじゃん。
欲しい言葉ももらえた。
今日はいっくんに浴衣姿を見て「かわいい」って言ってもらいたかった。
そのために、浴衣を選んで髪型も気合いを入れて、メイクもしたんだ。
花火大会に来たんだ。
それなのに、どうして……。
「これ、さっきくじ引きで当たったんだ。くるちゃんに似合いそうだなって思ってたから、会えてよかった。いまの浴衣の色にもぴったりだね」
そう言いながらいっくんは目の前まで来て、青色がアクセントになっているヘアクリップを見せる。
「つけていい?」
聞かれても、頷くだけで精いっぱい。
体が鉛のように重たい。
指先から冷えていくのがわかる。
いっくんがわたしの髪に触れているけど、神経が鈍くなりなにも感じない。
「わぁ、やっぱり胡桃ちゃんによく似合ってるね。すっごいかわいい!」
「くるちゃんはなんでも似合うよね」
どうして……。