好きな人には好きになってもらいたいじゃん。
素直に喜ぶいっくんに胸が痛む。
思ってないよ。
わたし『おめでとう』なんて、1ミリも思ってない。
思えるわけないじゃん。
「すごく勇気出したから……」
「私も今日、伝えようと思ってたから本当にびっくりした」
「それ聞いて、僕もびっくりしたよ」
幸せそうに会話をするふたり。
目の前の光景にだんだんと頭がぼーっとしてきて、視界が歪む。
だれかのものになってしまったいっくんなんて見たくない。
そんないっくん、いっくんじゃない。
わたしの好きな、いっくんじゃない。
「お似合いだよ」
にこっとやっとできた笑顔は、ちゃんと笑えてるかな?
だけど、ふたりとも同じように笑顔を向けてくれたから、きっとできたと思う。
こんなときでも、いっくんによく見られようと、思ってもない言葉を吐いて笑顔をつくることのできる自分に呆れる。