好きな人には好きになってもらいたいじゃん。
◆ちっぽけなプライド
―廉side―
子どもみたいに泣く胡桃を見て笑みがこぼれる。
いつもばかみたいに笑顔を貼り付けて、周りに対してにこにこヘラヘラ愛想を振りまく。
そのせいで、余計に男も胡桃を見るし勝手に惚れる。
違うんだよ。
胡桃はそんなやつじゃない。
そこらへんの男が簡単に惚れていい女じゃない。
まじで胡桃に惚れるやつは見る目ねぇよ。
胡桃をおぶって家までの道を歩く。
俺にしっかりとしがみつく胡桃に、また頬が緩む。
花火とか興味ねぇし、人混みとかすげぇ嫌い。
それでも、胡桃が行くとなれば話は別。
俺の目の届かないところに胡桃を出したくない。
胡桃はずっと、俺のそばにいたらいい。
「…………いっくん、」
遠くで上がる花火の音に紛れて、小さく震える声で兄の名前を口にする。