好きな人には好きになってもらいたいじゃん。
昔からいつだって胡桃は『いっくん、いっくん』って樹しか見ていない。
俺は胡桃の横顔ばかり見ている。
胡桃の顔が、俺に向いたことはない。
「チッ、」
樹しか眼中にない胡桃は嫌いだ。
樹のためにかわいくなろうとする胡桃は嫌いだ。
「……胡桃のあほ」
叶わない恋なんてさっさとやめろ。
彼女をつくる男なんて諦めろ。
俺だったら……。
「廉、重くない?」
「べつに」
「そっか……」
急に話しかけてきたと思えばそんなことかよ。
どうでもいいよ。
もし胡桃が重くてもおぶるくらいしてやる。
まぁ、実際はめちゃめちゃ軽いんだけど。
これも樹のための自分磨きってやつらしい。
胡桃の中心がすべて樹で、むかついてしょうがねぇ。