好きな人には好きになってもらいたいじゃん。
……あいつのために泣くなよ。
胡桃を見ているとめちゃくちゃにしてやりたくなる。
それを抑えるために、俺は背を向けて自分の家に入った。
帰ってすぐにシャワーを浴びる。
その間も考えるのは胡桃のこと。
……浴衣、似合ってないわけねぇだろ。
俺がいちばん思ってる。
でも、あれもぜんぶ、樹のためだから。
だから、かわいくねぇんだよ。
髪型だってそうだ。
いつもぜんぶ、樹のため。
むかつく。
本当にむかつく。
シャワーを浴びて、リビングに入ると樹がいた。
視線だけ向けたけどすぐに逸らし、冷蔵庫からミネラルウォーターの入ったペットボトルを取り出しいっきに飲む。
「廉のほうが先に帰ってたんだね」
機嫌いいのがわかる。
声がいつもより弾んでる。
樹も樹だ。
胡桃が無理に笑顔つくって祝福して、樹の前で明るくふるまってるのに。