好きな人には好きになってもらいたいじゃん。
「あと、私のことは名前で呼んでほしいな……?」
「え?」
「あ、よかったらね。胡桃ちゃんってかわいいから仲良くなりたいんだ」
驚いて目を丸くするわたしに、頬を赤く染めて焦っているような姫野先輩。
「じゃ、じゃあまたね!」
「あ、はい。お疲れ様です……」
サラサラな艶のあるショートボブを揺らして、急いで家庭科室を出て行ってしまった。
さっきの勢いに戸惑いつつも、わたしも帰ろうとみんなからもらったラッピングと自分の失敗作を紙袋に入れて持つ。
リュックを背負って、まだ残っていた部長と副部長に声をかけてから家庭科室を出た。
この時間だとサッカー部もそろそろ終わるかな?
もしかしたらいっくんと一緒に帰れるかもしれない。
グランドに寄って行こう。
そう決めて、昇降口でローファーに履き替えてからグランドへ向かった。
サッカー部の人はいるけど、いっくんの姿は見当たらない。
どこだろう……?
そう思ったとき、部室棟のドアが開き男子生徒数人がぞろぞろ出てきた。