好きな人には好きになってもらいたいじゃん。
「俺はずっとお前のこと許してねぇよ」
さっきの話聞いて、余計に許せねぇよ。
「気持ち踏みにじりやがって……」
「じゃあさ!」
俺の言葉と重なるように、今度は樹が大きな声を出す。
いつのまにか樹も、冷静を欠いているようで、焦ってひどい顔になってる。
俺の服をつかんで、じっと強い視線を向けてきた。
「じゃあ……廉はさ、僕がくるちゃんと付き合っても、よかったの?」
「、」
すぐに返すことができなかった。
樹の目が「よくないくせに」って嘲笑っているようで、なにも言えなくて奥歯を噛みしめた。
その目が嫌で、無性に腹が立って、顔を逸らす。
それと同時に樹は俺の服から手を離した。
「ほらね」
この場に似つかわしくない声。
俺の答えなんて聞かなくてもわかってる、と言いたげ。
自信のある声にむかついても、言い返す言葉はまだ思いつかない。