好きな人には好きになってもらいたいじゃん。



これで樹の前とか出んなよ。

ほかの男にはぜってぇ見せたくない。


髪も樹のために巻いてくくったりセットするくらいなら、なにもしてないいまのほうがいい。




「……足は」

「……大丈夫だよ」

「……そうか」



気まずい空気が流れる。

胡桃の目は赤く腫れていた。



元気出せよ。

あいつのために泣くなよ。

俺にしろよ。



言いたいことはたくさんある。

けど、俺のちっぽけなプライドのせいで、胡桃を慰めるようなセリフを伝えることができない。


昔の俺はほんとガキで、胡桃と話したくて、視界に入りたくて、いじわるばっかりしていた。

その名残で、いまも胡桃に対して素直に優しくできない自分がいる。




「……顔やばいぞ」

「……うるさい」



テンポの遅い会話。

空気の悪さを物語っているようだけど、その空気をつくったのも自分だ。




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