好きな人には好きになってもらいたいじゃん。
あの部室はサッカー部だ。
ってことはいっくんもいるかも!
出てきた人を順番に目で追う。
「お、姫じゃん」
「例の?」
「うん。約束したから」
「よっしゃー!」
姫……?
それに声。
さっき近くで聞いたかわいらしい声。
“姫”と呼ばれた人を部員の視線から探すと、やっぱり姫野先輩だった。
姫野先輩に近づく部員数人。
おかげで部室から出てきたいっくんがちょうど見えた。
部活直後なのにブレザーもしっかり着てネクタイもきちっと締めている。
さすがいっくんだな。
思わず笑みがこぼれる。
「いっく……」
「折原くん、お疲れ様。あの、これ……どうぞ?」
声をかけようとしたら、姫野先輩によってその声は遮られた。
いっくんに駆け寄り笑顔でおいしそうな綺麗なカップケーキを手渡す。
「あ、ありがとう……うれしい……」
「えへへ……お口に合うといいなぁ……」
「すごくおいしそうだね。ふわっとしてて、えと、その……」
「そんな綺麗じゃないからじっくり見られると恥ずかしい……」
「ご、ごめん!おいしくいただくね?」