好きな人には好きになってもらいたいじゃん。
そんな俺の焦りなんて気づかず、胡桃はほんのり微笑んだ。
あぁ、やっぱり胡桃は……。
思ってすぐに顔を逸らす。
「コンビニ行こうか」
「大丈夫。もう買ってきてある」
「ふ、そうか」
「どうせわかってたんでしょ」
唇を尖らせる胡桃は、俺が胡桃のことを理解してると思ってる。
俺が、いちばん胡桃のことをわかってるって。
……そうだよ。
胡桃のことは俺がいちばんわかってんだよ。
こういうときに胡桃がどんな行動をするかとか、俺は知ってんだよ。
胡桃のこと、こんなにわかってるのは俺だけだろ?
「早く来なよ」
「玄関から?」
「もちろん」
「いま行く」
窓を閉めて、スマホだけ持って家を出る。
胡桃の玄関の前に着くと同時にドアが開く。
タイミングばっちり。
こういうところでも、俺と胡桃はあってると思う。