好きな人には好きになってもらいたいじゃん。
胡桃の頭に手を置き、ゆっくりと下ろしていく。
見た目通り、サラサラな髪は指の隙間を通り気持ちいい。
肩までいくと、真ん中に移動させて露になっている鎖骨をなぞる。
「ん、」
そのとき、胡桃が少し反応を示した。
本気でやばい。
そう思い、誤魔化すようにすぐに胡桃の後頭部に手を動かし引き寄せた。
「ばーか。優しくするかよ」
抱き締めて耳元でつぶやく。
思ってることと反対の言葉。
「……いじわる」
俺の腕の中で胡桃もつぶやいた。
俺の背中に手を回し抱き締め返した胡桃の肩は小さく震えていた。
いま、俺がいちばん近くにいるのに。
俺の腕の中にいるのに。
きっといま、胡桃は俺のことを考えていない。
頭の中は、あいつでいっぱいなんだ。
胡桃の頭の中はこんなにもあいつでいっぱいで、それを原動力にここまでがんばってきたのに。