好きな人には好きになってもらいたいじゃん。




……………………あれ?

なに、あの雰囲気。

あんなに動揺しているいっくん、初めて見るんだけど。


姫野先輩も頬を赤く染めて俯いて、まるで恋する乙女みたい。



………え?

どうゆうことなの?


目が合うと同時に逸らしてもじもじして。


なにそれ?

ねぇ、いっくん。


生まれたときからいっくんがいて小さいころからずっと見てきたけど、いままでいっくんのそんな姿は見たことないよ?



いっくんはもしかして…………と、一瞬浮かんだ考えをどうにか振り払おうとしたけど、ふたりから目が離せなかった。


ズキズキと胸が痛む。

こんなにズキズキするのは初めてで、心臓がおかしくなったみたいだ。




「姫野さん、送るよ」

「え?でも……」

「ケーキのお礼に飲み物でも奢るから」

「そんな、いいよ。部活で作っただけだし」

「ううん。僕がお礼したいだけだから」

「じゃあ、お言葉に甘えて」

「うん」



やわらかく微笑みあういっくんと姫野先輩。

うそ、だよね?


そんなことないよね?





< 16 / 347 >

この作品をシェア

pagetop