好きな人には好きになってもらいたいじゃん。
……ずるいなぁ。
首を少し横に傾けて謝るいっくんに胸がきゅっとなる。
わたしもいっくんに会いたくて仕方なかった。
でも、会ったらつらいから会いたくなかった。
会いたくなかったけど、会えたらやっぱりうれしいんだ。
「ううん。いっくん髪切った?」
「ちょっとね。よく気づいたね」
「わかるよ」
「くるちゃんは少し見ない間に痩せた?」
「……夏バテかな」
うそ。
ほんとはいっくんに彼女ができたことがショックで食べられなかっただけ。
最初こそやけ食いしたけど、落ち着いたら悲しいほうが勝って、ご飯が喉を通らなくなった。
「無理しないでね」
「ん」
「あの……」
「胡桃」
いっくんがなにかを言いかけたときに、廉の声によって遮られた。
外に出てきた廉は、わたしの手をぎゅっと握る。
「行こう」
「え、あ……」
「あいつはほっとけ」