好きな人には好きになってもらいたいじゃん。
「ケンカ中?」
「……そんなとこ」
「いつから?」
「……祭りのあと」
「え、けっこう経つじゃん」
1か月近くケンカしたままなの?
廉といっくんがそんなに長いケンカをしているところは見たことがない。
よっぽどのことに違いない。
「だから、あの日来るの遅かったんだ」
「は?」
花火大会のあと、わたしはいっくんが彼女をつくってショックだった。
どうしようもできなくて、そういうときはやけ食いしようとお菓子やジュースをたくさん買った。
なんだかんだ廉はいつもそういうときに声をかけてくれる。
だから、廉の分も用意していたのになかなか来てくれなかった。
遅いって不機嫌になってたけど、いっくんとケンカしてたんだ。
「なにが原因?」
そう尋ねると、廉はわたしの目をじーっと見てきた。
深い漆黒の瞳に吸い込まれそうになる。