好きな人には好きになってもらいたいじゃん。

緊張して顔が強張っていたようにも見えたけど、だんだん顔が綻んで最後は笑顔でキメポーズをした。

拍手に包まれ次の女子グループに交代する。

女子グループもさっきの男子グループを見たあとだからか、楽しそうに踊っていた。


それを見てわたしもだんだんと緊張が解けていく。


「胡桃」


ステージに釘付けになっていると、廉がわたしを呼ぶ。

振り返ると思いのほか近くにいてびっくりして声が出そうになった。

両手で口を押さえてなんとか声を我慢する。


「っ、なに?」

「緊張してるかと思って」

「もうしてない」

「ふぅん?」


わたしの答えによくわからない返事をして、耳あたりをじっと見る。

そんなところをじっと見る人なんてめったにいないから少し戸惑った。



「なんかついてる?」


ほら、耳掃除してない。とか。

いやしたんだけどさ。

それかごみついてるとか。


不安になり廉を見返すと顔を逸らされた。





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