好きな人には好きになってもらいたいじゃん。
廉たちの先輩に顔をぐいっと近づけられる。
驚いて思わず目を見開くけど、なにも言わないわけにはいかないから戸惑いながらも口を開く。
「あ、えっと、つき……」
「先輩、すみません。俺ら文化委員で見回りの時間なんで行きますね。こいつは置いていきます」
「ちょっ廉!」
「おい!仕方ない、凛太郎に聞くか」
名前を言う途中で、廉がわたしの腕をつかんで歩き出す。
もう、そんな時間だっけ?
引き止めようとする町田くんは先輩につかまり、廉はそんなことを気にせずにぐいぐいとわたしを引っ張る。
ちょっと、痛い。
「離して」
「なんで」
「痛い」
「悪い」
わたしの言葉に素直に謝ったかと思えば、つかんでいた腕を離して手を握る。
そういう問題じゃないんだけど……。
歩き続ける廉に、小さくため息をもらした。
「見回りだっけ?どこチェックしなきゃいけないんだっけ?」
「んなもんテキトーでいいだろ」