好きな人には好きになってもらいたいじゃん。
すかした顔が少し曇る。
廉にはなんだか見られたくなくて、顔を背けて歩き出す。
「胡桃!」
なのに再び、今度は強い声で名前を呼びフェンスがガシャンと音を立てた。
気にせず歩いていたけど、腕を掴まれたせいで前に進めなくなる。
さっきのフェンスの音はぶつかった音じゃなくて、乗り越えた音だったみたいだ。
そしてわたしの腕を掴んでいるのはフェンスを乗り越えた廉。
「胡桃、どうしたんだよ」
「…………」
「おい……」
「えー!折原くんって辛いものすきなんだ!ちょっと意外……」
「あはは、そうかな?」
ふと聞こえてきた会話に体がビクッと反応した。
楽しそうな笑い声。
……わたしのときと違う。
わたしと話すときは物腰柔らかで大人な雰囲気をつくるのに、いまは男子高校生って感じだ。
視界にローファーとアスファルト。
と、わたしのより大きいローファーが入り込んでくる。