好きな人には好きになってもらいたいじゃん。


かほちんは行っちゃったし、特に行く場所もない。

仕方がないから黙って言うことを聞く。

けど、『顔上げんな』はさすがに意味がわからなさすぎるからなにもしない。


木の下にあるベンチに腰をかけて、人の流れを眺める。


いつも以上ににぎやかな学校で、みんな楽しそう。

わたしの気分はまだモヤモヤしている。


……ひとりになると、なんだかすごく寂しく感じて鼻の奥がツンとする。


廉、早く戻ってきてくれないかな。


顔をキョロキョロ動かして、廉を探す。



「あ……」


見つけた。

廉は数十メートル先にいる。

だけど、わたしの知らないかわいい女子数人に囲まれていた。


先輩かな?他クラスの子かな?

わからないけど、廉は囲まれて肩に手を置かれて道を塞がれている。


……わたしをひとりにして、廉はなにしてるんだよ。


もう知らない。

ひとり寂しくなって、廉の言う通りにするなんてわたしらしくない。


なんだか無性にイラついてベンチから立ち上がる。



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