好きな人には好きになってもらいたいじゃん。


もう一度、廉のほうを見るとまだ女子に囲まれて、ベタベタ触られている。


気分悪い。

廉の表情はすごく機嫌が悪そうだけど、そんなこと関係ない。


ここに廉が来てくれない事実にむかつく。


背を向けて廉がいるところと反対方向へ歩き出す。



「ねぇねぇ、1年のダンスしてた子じゃない?」

「まじじゃん。最後、左側にいた子」

「すげぇかわいいよね。きみにしか目がいかなかった」

「わかるわ。オレもきみがいちばんかわいいと思った」

「めっちゃ話題になってるよ。写真も出回ってる」


出店前に出てすぐに、声をかけられた。

はじめはわたしに話しかけているのかわからなくて足を止めなかったけど、前に回り込まれてしぶしぶ足を止める。



「近くで見てもかわいいね」


顔をぐいっと近づけられた。

思わず反射で顔を後ろに引く。



「ありがとうございます」

「わ、笑顔もかわいいね」

「でも、謙遜しないんだ。言われ慣れてる」

「かわいいって自覚してる?これくらいかわいかったら普通か」


……感じ悪い。

べつにそういうわけじゃないじゃん。

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