好きな人には好きになってもらいたいじゃん。
かわいいなんて努力でそうしてるんだよ。
はじめからかわいいわけない。
「素直にうれしく思っただけです」
こんな相手に笑顔振りまいたところで、って思うけどここで笑顔を崩さない。
わたしはいままでもそうしてきた。
愛嬌は大事だって。
どんな人に対しても同じように、常に笑顔でいた。
「えーかわいい」
「優しいんだね」
「オレ、謙遜する子よりも好きだわ」
「わかる。かわいいって思ってるくせに、否定する子無理だわ」
あんたらの無理は、わたしたちの無理でもあるわ。
思っても言わないけどね。
「では」
「ちょっと待ってよ」
会釈をしてこの場を離れようとしたけど、手首をつかまれてしまった。
そのまま別の人には肩に手を回される。
ゾッとするけど、無理やりに笑顔を作る。
「ひとりなら一緒に行こうよ」
「急いでるので」
「どこ行くの?ついてくから」
「大丈夫ですよ」
「遠慮しないで、ね?」
……どうしよう。
周りにたくさん人はいても、お祭りモードでここに人が集まっていても気にしていない。
やっぱりあそこから離れるんじゃなかった。
廉はどこ?
……あ、女子に囲まれていたんだった。
思い出すだけで、またイライラが募っていく。