好きな人には好きになってもらいたいじゃん。



廉には頼らない。

ここは、ひとりでもなんとかする。



「お手洗いに行きたいので」

「一緒に行くよ」


はぁ?

そこは引いてよ。

なんで『一緒に行く』なんて言えるの?


つかまれた手首も、肩に回された手も本当にそろそろ限界だ。


俯いて下唇を噛み、あふれてくるものをこらえる。



「くるちゃん、遅いよ」


前からそんな声が聞こえて、弾かれるように顔を上げた。

そこには青色の法被を着ているいっくんがいる。


目が合うと優しく微笑んでくれた。



「遅いから迎えに来たよ」


わたしに近づいてきて、手を差し出される。

熱いものが込み上げてくるのを必死でこらえて、あいているほうの手を重ねた。


その瞬間にぎゅっと握られ引っ張られる。

いきなりだったからわたしも驚いたし、周りにいた人も予想していなかったみたいであっさり手が離れる。



「あ、おい」

「お世話になりました」


声をかけられるも、いっくんはそれだけ言って頭をペコっと下げてわたしと手を繋いで歩き出す。



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